ちょっとびっくり、まあびっくり。
長すぎた連休を終えた後の出勤はありえなく体に響くものだ。
元号が平成から令和へと変ったことが影響し、今年のGWは10連休となっていたために、本日の業務がやけにきつく感じた1日であった。
6時前には退社し、僕は会社の近くにある顔なじみのカレー屋で早めの夕食を取っていた。そのカレー屋はカウンター席のみとなっており、カウンター内には50代くらいの女性が経営している店であり、夜はバーにもなり近隣の企業や役所で勤める客層で賑わうのだ。
しかしながら、時刻が早いため客はまだ僕一人のみであった。カレーをすする僕に対して店長が声をかける。
「肩の調子は良さそうだね! GW何してたの?」
僕は肩をすくめて答えた。
「何もしてねっす。いやぁ、金がねえし、結構マジで貯金してんすよ。」
それを聞いた店長は笑みを浮かべながら僕に答えた。
「いやでも、あんたみたいな若い子が遊ばないと将来遊べなくなるよ?まあ、貯金もいいんだけど、早くいい子見つけなさいよ。」
僕は少しげんなりしながら答えた。
「わかってるよ。でも、いつ何が起きるかわからねえんだ。だから今は貯めたいの!また入院とかしたら嫌じゃん。」
そんな風に会話が盛り上がったところでふと僕の携帯が鳴った。
「もしもし?兄ちゃん元気?」
電話相手は弟からだった。弟は去年結婚をし、現在は九州の方で生活をしている。相手の女性はミャンマー出身だったと思う。弟とは普段から電話をするため、このように弟から電話が鳴るのは特段珍しいものでもない。
僕「おうよ!まあぼちぼちやってるよ。まあ、最近は貯金で必死なんだよ。」
弟「あー、大変だよね。なぁに?アイドルは行ってないの?」
僕「ライブ行く回数は減ったかなぁ。まあ、それよりも貯金だな。」
弟「そうなんだ!そういえば、俺今度嫁の祖国に行くんだ。盛大に結婚パーティ開くんだけどね。相手の親も当然呼ぶし、一流のホテルでやる予定!でもすっげえ値段が高いんだ。」
僕「そりゃそうだろうなぁ、まあでもそこはしっかりしてやんねえとな。でも、ミャンマーだと物価は安いんじゃね?」
弟「でも、まあ会場がすごいところだから値段は高いよ・・・」
僕「そっか、まあまた盆休みに帰省したときにでもお祝い金渡すから。タイミングなかなか合わなくて悪いな。」
弟「ありがと!そういえば兄ちゃんおじさんになるんだよね。」
急に弟が訳のわからないことを言い出した。
僕「え?オジサンニナルトハ?」
弟「言葉のまんまの意味だよ。兄ちゃんはおじさん、母さんはばあちゃんに。」
僕「ボクガオジサン、カアサンがバアチャン?だめだ、ちょっとわからない。」
頭の悪いやり取りが続きようやく理解できた頃には、カレー屋の店長が僕の前で盛大に笑っていた。
僕「オメデタ?」
弟「そうなんだよ!嫁ね、年内には出産予定!」
僕「オレ、オジサン。年内、こどもウマレル!オメデトウ!」
動揺が隠しきれずカタコトになっていた。
僕「ちょっとこれ、後からくる奴だわ。でも、あれだ、超めでてえな!!母さんがばあちゃん、父さんがじいちゃん!おれがおじさん!おじさん!!!!」
いつまでも、どうしようもなく、頭の悪い反応を示す僕であった。
弟の話ではまだ6週間だということであり、出産時期はもしかすると年を跨ぐ可能性があるということだ。しかしながら、令和ベイビーが生まれることには変わりはない。
そうか、僕はおじさんになるのか。絶対可愛い子が生まれるだろうなと思う。可愛くないわけがないと思っている。今年の年末の楽しみがひとつ増えたのであった。
これからさらに貯金しないとなと、僕は改めて決意を固めたのだった。